ある時は、焼き鳥屋でのアルバイト、またある時は、歌舞伎町でのナンバー1ホスト、さらに突然の女装、または自らを豚汁王子と自虐し裸体を晒す、さらに、ある時は私服警官よろしく情報商材詐欺犯を捕まえる…。など、SNSやYouTubeの中で暴れ回り、時に奇怪とも言える「青汁劇場」を繰り広げて来た、元・(株)メディアハーツ(現・ファビウス(株))の創業者であり、元・代表取締役社長、三崎優太氏。

逮捕後、焼き鳥屋でバイト
実は彼自身、現在、リアルに、とんでもない事件に巻き込まれている。
本当の「劇場」は静かに始まっていた。
これまで、三崎は、この事件について、断片的にTwitter等では発信して来たが、その全容を語る事は控えて来た。
それは係争中である事(注:事実を争うこと)も理由ではあるが、この件だけは、面白おかしく受け取られたくない、また、センシティブな問題であるので軽々しく扱って欲しくない、という、三崎氏の、本業である「起業家」としての強い想いからだった。
我々に、「全て正確に、話した通りに真実を書いて欲しい」という事を前提に、現在、三崎氏が巻き込まれている「アスクレピオス製薬(株)グループを巡る壮大な疑惑・疑念・事件」ともいうべき物語を、現時点で分かる範囲で、包み隠さず、その全てを初めて語ってくれることとなった(2020年7月現在)。
(尚、この疑惑・疑念に関しては相手側である「越山晃次氏」にもコンタクトを試みているが現時点で応答はなかった)
転がり落ちた王子様
年商130億。(税引き後、約120億(民間信用会社調べ・2017年9月期)。)
美容・健康食品のネット通販事業で爆発的なヒットを生み、彼自身の年収は、20代で驚きの12億円。
誰しもが憧れる億万長者へと、のし上がった三崎優太氏。
18歳で起業し、高卒での試行錯誤の末の結果だったが、時代の寵児の勢いは半端無かった。年々、驚くべきスピードで事業は拡大していった。
三崎は何台もの高級車を所有。ブランド物の時計やバッグに、おびただしい数のブランド服。馬主になり、競走馬を多数所有。海外旅行で豪遊、専属ドライバーや家政婦を雇い、高級マンションに住む生活。
絵に描いたままの成功者だった。

マルタ共和国で購入したブランド品の数々。

三崎が当時馬主だった馬

三崎が当時所有していたフェラーリ
ところが、ある日を境に、彼の人生は一変する。
「2019年2月12日 逮捕」。
19年2月、法人税など計約1億8000万円を脱税した容疑で、東京地検特捜部に逮捕される。
架空の広告宣伝費を計上、また架空の課税仕入れを計上するなどした、として逮捕。
同時に同社関係者2人も逮捕された。
三崎「修正申告させて欲しい、と何度もお願いしましたが、叶いませんでした」。
三崎「それ(逮捕)は今も納得しきっていませんし、それまで国に20億円の税金を納めてきた、という自負もあります。
芸人の徳井さん(チュートリアル)が、そもそも税金を納めていなかった、というような事例とは全く違う。なのに、なぜ、という想いはありました」。
(注:徳井義実さんは東京国税局の税務調査を受け、2018年までの7年間で計約1億1800万円の申告漏れを指摘された。うち約2000万円は仮装・隠蔽(いんぺい)を伴う所得隠しと認定された。しかし逮捕は免れた)。
三崎は今もこう言う。
「せめて修正申告の機会を与えて欲しかった、一発アウト、というのはあんまりではないか。それは今でも残念に思っています」。
結局、三崎は起訴され、2019年9月5日、東京地裁に於いて「懲役2年、執行猶予4年」の判決が下る。同時に、法人としての(株)メディアハーツ(現・ファビウス(株))にも、罰金4600万円が言い渡された。
判決を待たずして、三崎は、自らの力で、わずか18歳で作り上げた、年商120億円の「(株)メディアハーツ」の代表取締役を、2019年6月12日付けで、辞任せざるを得ない状況となった。
そして…。彼自身が自分の存在を世に問うべくSNSで必死に発信をしていたその裏で、実は、静かに、しかし、確実に、事は、実行されていたのだった。
そもそも今、何が起こっているというのか?
三崎「分かっているだけで・・・・」。
「32億8千万円」が消えた?
―まずは今、三崎さんと、三崎さんが筆頭株主を務める「アスクレピオス製薬株式会社」(以下アスク社)に、何が起こっているのかを詳細に教えて下さい。
(注:会社は株主が所有しており、三崎氏はアスク社の60%(過半数)の株を持つ筆頭株主である。残り40%は「越山晃次」(こしやまこうじ)氏が所有するが、過半数を三崎氏が持つ事は、つまりアスク社は過半数以上、三崎氏が議決権を有する企業である)
先に、三崎さんはTwitterを通じて、「アスクレピオス製薬株式会社の資金が不正に流出している」と仰っています。それはいくらぐらいなのでしょうか?
三崎「待って下さい。正確にお答えしたいのでお待ちください(書類を取りに中座)。お待たせしました。
現時点(2020年6月中旬)で分かっているだけで、32億8000万円です」
―32.8億円ですか?尋常な数字ではないですね。そもそもアスクレピオス製薬株式会社の現在の年商はどれくらいでしょうか。
三崎「担当者を呼びます、お待ちください」
担当者「お待たせしました。2019年決算期で約72億円です。その前年は24億円、です」
―「飛躍的な伸び率ですね。これはかつて、三崎さんが作られたメディアハーツの伸び率と酷似しているように見えます。
三崎「現在、社内に調査チームを設けています。正確に言うと『社内不正調査チーム』ですね。このチームが丹念に調べています。
ここに明細もあり、内訳も把握しています。もちろんこれは、前・代表の越山晃次氏による不正な流出です」

メディアハーツの勢いを物語る新聞記事
三崎「はい、そうです。アスク社の主力商品の販売終了が、勝手に、前・代表、越山晃次氏により為され、その販売ページも突然、削除されました」
―お客様にとっては大変、驚かれたことでしょう。期間はどれくらいでしたか。
三崎「我々が気が付いて、大至急、復旧させたのですが、それでも彼がそのような状況を起こしたことにより、最低1週間は販売不可能な状態に陥りました」
担当者「これは次の決算期に響いて来ると考えられます。この1週間で困惑から離脱されたお客様が多くいらっしゃいました」
―会社の信用、また売上に大きな損害を与える行為を越山晃次氏が行ったという疑惑があるということですね。
三崎「まさにそうです」

三崎の元で立ち上げられた「不正調査チーム」
40人中、社員が39人、突然いなくなった?
―また同時に当時、アスク社に在籍していた社員、40人が、たった1人を残して、転籍させられていた、と。
三崎「そうです。彼らは会社都合で越山氏により、当時、子会社だった『株式会社アクア』に転籍させられています。

アスク社とその関連会社(一部)
また、箝口令が敷かれているようで、一様に沈黙を保っています。自由に話すことさえ出来ない状況です。異様な状態です」
―なるほど。これについては、越山氏はマスコミ各社に送り付けた文書やSNSで、三崎さんが「株主として介入して来ることを嫌がった従業員が退職したに過ぎない」と記載し、反論しています。
三崎「全くのデタラメです。彼の言うことはこれに限らず、何一つ信じられません。これだけではありません、あらゆる面でウソにウソを重ねているのです」
―では、「事務所が『もぬけの殻』」となったと。これも三崎さんが発信されていました。これはどういう意味でしょうか。
三崎「はい。あらゆる物が、私の知らぬ所で、勝手に運び出されていました。複合機からパソコン、スピーカーまで売られ、気が付いた時には『もぬけの殻』だったんです」
(注:度々言うが、三崎氏はアスク社の筆頭株主である。その三崎氏に何ら報告、許可なく会社の財産を移動、または売却する等はあってはならない)
―では、これについても越山氏の、
「会社の備品については従業員が退職したため適正価格で売却したに過ぎません」
という「反論」は全く当たらないということですね。
三崎「全く当たりません、そもそも、従業員は自己都合で辞めていません、越山氏が会社都合でアスク社を退職させ、アクア社に移籍させました。これは明らかです。ですので、
『従業員がいなくなったから備品を売却した』というのは全くおかしな話です」

運び出されたアスク社の財産(同社提供写真)
ここで筆者も非常に不可思議に思ったことは、従業員が一気に揃って40人中、39人、自己都合で、辞めたい、と申し出た場合、経営者としてまず、何をするかと言えば、「引き留め」だろう。そして、どうしても皆が辞めたい、と、頑な(かたくな)に言うのであれば、次にすることは、新スタッフの採用を大至急、行うことではないか?
あらゆる採用媒体や、あらゆる手段(派遣会社に依頼する等)を使って、
大至急、39人の穴を埋めねばならない。そう思うのが、一般的な経営者の、このような場合の困難の乗り越え方ではないのか?
年商72億円ものアスク社を、まるで、無き物にするのが前提かのようにも見える動き。
穿った(うがった)見方だろうか?
三崎「そもそも、彼は、2017年の年末、僕にこんなメッセージを送って来ています。感謝のメッセージです。そして2018年もよろしくお願いします、と、伝えて来ています」。

(三崎氏提供)
感謝?挨拶?そのような行動を取っていた彼に、今、分かっているだけで、「32億8千万円」の不正流出の疑いがあるというのか? 一体、どういう事なのか? 今、何が起きているというのか?
三崎氏は言った。
三崎「最初からお話しましょう。よろしいですか?」
時は2014年に遡る…。
interview&Editor/MIU
Photo/石黒幸誠(go relax E more)